「私は今まで、さまざまな被災地に足を運んできましたが、今回みたいなボランティアバッシングは聞いたことがないですね。いち早く現地に入ったNPOの方々から『これまでの災害の中でもとくにひどい状況だ』と情報を得ていたんですが、にもかかわらず『ボランティア入れるな』の大合唱が起こりました。
なぜなのか、というのは理解に苦しみますね。しかし1つには、政府が初動の遅れをなにかしら隠したいという意図がなければ、こんなことにはならなかったと思います」
そう語るのは、能登半島地震の発生直後の1月5日に、被災地の視察に出向いてバッシングを受けた、れいわ新選組の山本太郎代表(49)だ。今回、山本氏が“ボランティアバッシング”に感じた違和感、そして自らに向いた批判について語った(全2回の1回目)。
■“ボランティアバッシング”が招いた深刻なボランティア不足
能登半島地震から2カ月。発災当初、現地入りしたボランティアや政治家、ジャーナリストなどに対し、「迷惑になる!」「現地に入るな」といった“ボランティアバッシング”が巻き起こったことは記憶に新しい。これにより、ボランティアを控えた人も多かった。
その結果、一般ボランティアの募集が始まった現在でも、被災地ではボランティア不足」が続いているという。石川県によると、現地に入った一般募集のボランティアは延べ2739人(2月16日時点)。2月18日の神戸新聞によると、阪神・淡路大震災では発生1カ月で延べ62万人がボランティアに入っていたという。
現地までのアクセスが悪いことや宿泊場所の不足などの影響もあるが、「SNSで叩かれることを恐れて萎縮している学生もいる」と、大阪大学大学院教授(災害社会学)の渥美公秀さんが神戸新聞の取材に答えている。
《必要な物資を速やかに被災地に届けるためにも、渋滞解消が重要です。不要不急なお車でのご移動は、可能な限り抑制いただくよう、国民の皆様の御理解と御協力を重ねてお願いいたします》
1月4日、岸田文雄首相はこう呼びかけた。それに呼応するように、ネット上では、《ボランティアの車両が殺到したせいで、深刻な渋滞が現地で起きている》などといった真偽不明の情報が飛び交うようになった。しかし、山本氏がみた現地の状態はだいぶ異なっていたという。
「1月5日に現地入りしたとき、穴水というところから先に行くのには少し渋滞がありました。一部には見物人もいたかもしれませんが、おもに被災された方々の遠方に住むご家族が支援物資を持って入るためのものでした。それに、ルートを選べば渋滞は回避できました。私が入った志賀原発沿いのルートはガラガラでしたからでしたからね」
同時期に、ボランティアとして現地に入った人の証言の多くも山本氏と一致している。
「災害の大きさや深刻さによって、すぐに救いの手が差し伸べられない、なかなか届かないってことはあり得るとは思います。しかし、それ以前にこれまで何度も起きてきた災害に対するノウハウが体系だって蓄積されてないんです。
本来なら、内閣府の防災担当を中心にそれをやっていくべきなんですけど、2〜3年で役人が交代するので人材が育ってない。民間のNPOやボランティアの方がノウハウを蓄積しているんです」
被災地の職員のほとんども、このような大規模な震災に直面するのは初めてだ。一方、経験豊かな民間のボランティア団体は、多くの被災地を経験し、どのような支援や物資が必要なのかを熟知している。
災害救助法では<国が地方公共団体、日本赤十字社その他の団体及び国民の協力の下に>救助や被災者の保護を行うとされている。また、災害対策基本法では<国及び地方公共団体は、ボランティアによる防災活動が災害時において果たす役割の重要性に鑑み、その自主性を尊重しつつ、ボランティアとの連携に努めなければならない>と定められている。
震災対応においてボランティアの活動は前提となっており、過去の震災でも発生直後から多くのボランティアがあたり前のように被災地で活躍してきた。